EmDashでつくるWebサイト制作の、解説と検証ノート記事一覧

書く人が増えても回るか:EmDash 1.2 で権限・確認の流れ・予約公開を試した

外部ライターや複数の部署が記事を書くとき、EmDash では誰に何を任せられるのか。役割ごとのアカウントを作り、下書き、確認、予約公開、版の履歴、同時編集、署名を 1.2.0 で実際に試しました。書く人と公開する人は分けられます。一方で「確認待ち」の状態や通知はなく、寄稿者の保存には不具合がありました。

この記事の目次

オウンドメディアを続けていると、書く人が増えます。外部のライターに頼む、営業部や採用担当にも書いてもらう。そのとき気になるのは「誰でも公開ボタンを押せてしまわないか」「確認の流れを作れるか」という点です。

結論から書くと、EmDash では 書く人と公開する人を、役割で分けられます。他の人の記事を直せるのは編集者以上で、同時に開いた記事の上書きも防がれます。一方で、WordPress にある「レビュー待ち」の状態や、確認を頼む通知はありません。最も権限の小さい書き手(寄稿者)には、1.2.0 時点で保存の不具合もありました。

書く、確かめる、公開するの 3 段階。寄稿者と投稿者が書き、編集者が確かめ、編集者と管理者が公開する。投稿者は自分の記事なら確認を通さずに公開できる
役割で「書く人」と「公開する人」を分けられる。ただし投稿者は自分の記事を自分で公開できる

何を、どの版で、どうやって確かめたか

  • 版:EmDash 1.2.0(2026年10月15日時点の最新)。npm create emdash@latest で作ったブログのひな形を、手元のパソコンで動かしました。
  • アカウント:購読者・寄稿者・投稿者・編集者・管理者の 5 つの役割で、1 人ずつアカウントを作りました。
  • 方法:管理画面と同じ API(システム同士で操作するための窓口)を、役割ごとに呼びました。結果が分かれた操作は、管理画面でも同じ動きになるかを画面で確かめました。
  • 試したこと:下書きの作成と修正、他の人の記事の修正、公開と予約公開、版の履歴と復元、同時編集、社外向けのプレビュー、署名(執筆者名)の付け方、ユーザーの招待です。

役割の名前は、管理画面を日本語表示にしたときの呼び方です。WordPress の日本語版と同じ呼び名になっています。

役割ごとに、できることとできないこと

EmDash の役割は 5 段階です。上の役割は、下の役割ができることをすべてできます。記事については「自分の記事か、他の人の記事か」も区別されます。

やりたいこと

必要な役割

確かめた結果

下書きを作る

寄稿者以上

購読者は拒否された

自分の記事を直す

投稿者以上(1.2.0)

寄稿者は拒否された(後述)

自分の記事を公開・予約する

投稿者以上

寄稿者は拒否された

他の人の記事を直す・公開する

編集者以上

投稿者は拒否された

自分の記事の版の履歴・プレビューを見る

寄稿者以上

寄稿者でも見られた

カテゴリや執筆者名を作る

編集者以上

投稿者は拒否された

ユーザーを招待・管理する

管理者

編集者は拒否された

ポイントは 2 つです。

  • 投稿者は、自分の記事を自分で公開できます。 確認を必ず通したい書き手は、寄稿者にする必要があります。
  • 権限の確認は、サーバー側で行われます。 管理画面でボタンが見えても、権限のない操作は保存の段階で止まります。実際、寄稿者の画面にも「Publish now(今すぐ公開)」のボタンは表示され、押すと拒否されました。

WordPress の役割との対応

WordPress

EmDash

違い

管理者

管理者

ほぼ同じ。設定、ユーザー、記事の種類の変更

編集者

編集者

他の人の記事とカテゴリを扱える点は同じ。EmDash ではメニューと執筆者名も扱える

投稿者

投稿者

ほぼ同じ。自分の記事を公開できる

寄稿者

寄稿者

WordPress は「レビュー待ち」に出せる。EmDash には提出の仕組みがない

購読者

購読者

公開記事を読むだけ。会員限定の記事に使う

WordPress では、プログラムやプラグインで役割に権限を足したり、新しい役割を作ったりできます(公式ドキュメント)。EmDash の 5 つの役割は固定で、権限の組み合わせを変える設定は見当たりませんでした。

確認の流れ:直す、見比べる、戻す、が一通り揃う

ここからは、投稿者が書いた記事を編集者が確かめて公開する流れを、順に試した結果です。

同時に開いても、上書きされない

編集者が記事を開いている間は、その記事に 編集ロック がかかります。同じ時間に投稿者が保存しようとすると、「編集者が開いています」という理由で拒否されました。管理画面では、後から開いた人に「読み取り専用で開く」か「引き継ぐ」かを選ぶ画面が出ます。

ロックは、画面を閉じれば外れます。閉じ忘れても、最後の操作から 7 分で自動的に外れます。ロックを外した後でも、古い内容のまま保存しようとすると「他の人が先に変更した」として止まりました。気づかないうちに他の人の修正を消す事故は、2 重に防がれています。

公開後の修正は、確認が済むまで表に出ない

公開済みの記事を投稿者が書き換えても、読者に見える記事は変わりませんでした。修正は下書きとして保留され、編集者は公開版と下書きの違いを並べて確かめられます。確認が済んだら公開し、不要なら下書きを破棄します。

前の版に戻せる

保存のたびに版(変更履歴)が残り、誰が保存したかも記録されます。第 2 稿に戻すと、第 2 稿の内容が新しい版として加わりました。戻す前の版も消えないので、戻し間違えてもやり直せます。戻した内容も下書きに入るため、公開中の記事は公開するまで変わりませんでした。

社外の確認者には、期限付きのリンクを送る

監修者や取材先など、アカウントを持たない人に公開前の記事を見せたい場面があります。EmDash では、下書きを見られる 期限付きのプレビューリンク を発行できます。ログインしていないブラウザで開くと、下書きの内容が表示されました。期限は発行時に決められ、5 秒で切れる設定にして待つと、下書きは表示されなくなりました。

予約公開と署名は、そのまま使える

予約公開は、時刻どおりに出た

投稿者が自分の記事を 70 秒後に予約したところ、予約時刻から約 30 秒以内に公開されました。公開日時は、実際に処理された時刻ではなく予約した時刻で記録されます。管理画面には、公開済みと予約中の記事を並べるカレンダーもあります。

Cloudflare の上で動かす場合は、定期実行の設定(Cron Trigger)が必要です。公式のひな形には最初から入っていますが、古い環境から移したサイトでは確認が要ります(公式ドキュメント)。Node.js で動かした今回の環境では、設定なしで動きました。

署名は、アカウントと別に持てる

記事に表示する書き手の名前(執筆者)は、ログイン用のアカウントとは別に作れます。編集者が「山田 花子(外部ライター)」という執筆者を作り、投稿者が自分の記事にその名前を付けられました。アカウントを持たない外部ライターや、部署名での署名にも使えます。執筆者を作れるのは編集者以上です。

正直に書くと、まだ足りない部分もある

ここまでの道具は揃っています。足りないのは、それを 回すための仕組み です。

EmDash 1.2.0 で複数ライター運用に揃っている機能と、まだない機能の比較。揃っているのは 5 段階の役割、編集ロック、版の履歴と復元、期限付きのプレビューと予約公開、アカウントと別の執筆者。まだないのは確認待ちの状態、通知、記事内のメモ、独自の役割と多段の承認で、寄稿者の保存には 1.2.0 の不具合がある
揃っているのは道具。確認待ちの状態、通知、内部メモはまだない
  • 寄稿者が、作った下書きを保存し直せない。 1.2.0 では、寄稿者は記事を作れても、その後の保存がすべて拒否されました。管理画面でも「保存に失敗しました」と表示されます。EmDash の開発側でも不具合として扱われ、2026年10月13日に修正が取り込まれました。ただし、この修正を含む版はまだ公開されていません(10月15日時点)。
  • 「確認待ち」の状態がない。 記事の状態は下書き・予約・公開の 3 つです。WordPress の「レビュー待ちとして送信」にあたるボタンはなく、書き手が「できました」と伝える手段は、社内のチャットなど EmDash の外になります。
  • 確認を頼む通知がない。 下書きが増えても、編集者にメールなどで知らせる機能は、管理画面にも API にも見当たりませんでした。
  • 記事の中にメモを残せない。 「この数字の出典は?」のような編集者のメモを、記事に付けておく機能はありません。EmDash の「コメント」は、読者が公開記事に書き込むためのものです。
  • 承認は 1 段だけ。 「部長が見てから広報が公開」のような 2 段階の承認や、独自の役割は作れません。
  • 管理画面の一部が英語のまま。 役割名などは日本語で表示されますが、公開ボタンや編集ロックの案内は英語でした。
  • アカウント作成に、パスキーかログイン連携が要る。 招待された人は、パスキー(指紋や顔認証でのログイン)かログイン連携でアカウントを作ります。社外のライターには、最初の登録で手助けが要る場合があります。

どんな会社に向いているか

今の EmDash で回しやすいのは、次のような体制です。

  • 書く人が数人〜10 人程度で、確認する人が 1〜2 人。 「書いたらチャットで知らせる」で回る規模なら、通知がないことは問題になりにくいです。
  • 社内の書き手を「投稿者」、外部ライターと確認役を分けたい会社。 投稿者は自分で公開できるので、確認を必ず通したい書き手は寄稿者にします。寄稿者を使うのは、保存の修正が入った版に上げてからにします。
  • 公開の判断を人に残したい会社。 EmDashラボ自体も、記事は AI と人で作って下書きまで入れ、公開は人が管理画面のボタンで行っています。下書きと公開が分かれていることは、この運用の前提です。

反対に、多段階の承認が社内規程で決まっている、確認待ちの一覧と通知がないと回らない、という体制なら、今は WordPress のほうが合います。WordPress には「レビュー待ち」が標準であり、状態を増やす仕組みもあります(公式ドキュメント)。EmDash でも、公式の Webhook 通知の追加機能で、記事の変更を外部のチャットなどへ送ることはできます(今回は試していません)。

今のサイトで「誰が書き、誰が公開しているか」を一度書き出してみてください。その表をもとにした役割の割り当てと、足りない仕組みの補い方の相談は、EmDashでつくるWebサイト制作から受け付けています。

参考(一次情報)

WRITTEN BY

EmDash制作チーム

Noweverの「EmDashでつくるWebサイト制作」の制作チームです。Cloudflareの基盤で動くCMS「EmDash」によるサイト設計、更新機能、セキュリティ、WordPressからの移行について、制作の現場で確認したことを記録しています。

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