EmDashでつくるWebサイト制作の、解説と検証ノート記事一覧

WordPress のメディアは今移すべきか、待つべきか:判断の分かれ目と費用の決まり方

WordPress で運用しているメディアを EmDash に今移すか、新しく立てる部分だけ EmDash にするか、待つか。判断を分けるのは、プラグインへの依存、記事数、更新体制、保守の負担です。記事 1,000 件の取り込みを実際に試した結果と、公開されている費用の目安から、どこに工数と費用がかかるかを整理しました。

この記事の目次

WordPress で記事を積み上げてきたメディアを、EmDash に移すべきか。答えは「今移す」「新しく立てる部分だけ EmDash にする」「待つ」の 3 つに分かれます。どれが合うかは、プラグイン(追加機能)への依存、記事数、更新の体制、保守の負担でほぼ決まります。

移行の費用で気になるのは記事の取り込みですが、取り込みの作業そのものは短く終わります。この記事のために合成した記事 1,000 件を EmDash 1.2.0 に取り込んだところ、約 4 秒で終わりました。工数がかかるのは、取り込む前の棚卸しと、取り込んだあとの手直しと確認です。判断の材料と、費用が何で決まるかを順に整理します。

判断の分かれ道:今移すは、業務を支えるプラグインがなく、保守や改ざん対応が負担で、デザインの刷新を予定している場合。新しい部分だけ EmDash は、本体サイトが WordPress で安定し、メディアや特設サイトを新しく始め、2 つの仕組みの保守を引き受けられる場合。待つは、会員・決済・予約をプラグインに頼っている、長期サポートの期限を契約の条件にしたい、今の保守体制で事故が起きていない場合
どれを選ぶかは、プラグインへの依存と保守の負担で決まることが多い

答えは「今移す」「新しい部分だけ EmDash」「待つ」の 3 つに分かれる

今移すのが合うのは、業務を支えるプラグインがなく、プラグインの更新や改ざんへの対応が負担になっている場合です。デザインの刷新を予定しているなら、なおさら時期が合います。WordPress のテーマ(デザインの型)は EmDash にそのまま持ち込めず、表示部分は作り直しになるからです。刷新と移行を一度に済ませると、作り直しが 1 回で済みます。

新しく立てる部分だけ EmDash にするのは、会社のホームページは WordPress のままで安定していて、これからオウンドメディアや特設サイトを始める場合です。記事の移行がないので、移行の費用もかかりません。その代わり、2 つの仕組みを並べて保守することになります。ログインも管理画面も別々です。

置き場所をサブドメイン(media.example.co.jp のような別の住所)にするか、今のドメインの下の階層(/media/)にするかは、この記事では確かめていません。構成を決める前に個別に確認します。

待つのが合うのは、会員管理や決済、予約といった業務の中心をプラグインに頼っている場合です。今の保守体制で事故が起きていないなら、急いで移す理由は小さくなります。待つ場合の判断材料は、後の「正直に書くと」の節にまとめました。

判断を分けるのは、6 つの確かめどころ

迷ったときは、次の表の左の列を今のサイトに当てはめてください。右の 2 列のうち、当てはまる側が多いほうが答えに近くなります。

確かめること

今移すに傾く

待つに傾く

業務を支えるプラグイン

ない、または EmDash 側に代わりがある

会員・決済・予約などを頼っていて、代わりがない

記事の作り

標準の編集画面(ブロック)で書いた記事が中心

ページビルダーやショートコード(角括弧で機能を呼び出す記号)を多用している

更新の体制

社内に更新担当がいて、新しい編集画面に慣れる時間がある

繁忙期の直前、担当の交代直後

保守の負担

プラグインの更新が追いつかない

保守の契約が機能している

事故の経験

改ざんやスパムの被害を受けたことがある

事故が起きていない

デザインの予定

1 年以内に刷新したい

当面は変えない

「新しい部分だけ EmDash」は、この表で本体サイトが「待つ」側、新しく始めるメディアが「今移す」側に当てはまる場合の答えです。

ページビルダー(Elementor など、画面を部品で組む追加機能)で作った記事が EmDash にどう入るかは、この記事では確かめていません。公式ドキュメントも「取り込み後に表示を確かめること」と書くにとどまっています。該当する記事が多いサイトは、数本を試しに取り込んでから判断します。

メディアに必要な機能のうち、EmDash に標準で備わっているもの、追加機能で補うもの、まだないものは、メディア運用に要る機能は揃うかで一つずつ確かめています。プラグインへの依存を確かめるときの材料にしてください。

移行の工数は、取り込みではなく手直しと確認にかかる

記事 1,000 件の取り込みは、約 4 秒で終わった

取り込みにどのくらい時間がかかるかを、2026年10月15日に確かめました。

  • EmDash 1.2.0(npm create emdash@latest で作ったブログのひな形)。Node.js 24 で動かし、手元の Mac の開発サーバーで実行しました。Cloudflare の本番環境では測っていません。
  • 取り込んだデータ:日本語メディアを想定して合成した WordPress の書き出しファイル(WXR)。実在するサイトのデータではありません。1 本あたり見出し 3 つと段落 6 つ、箇条書きを持ち、一部に表、引用、お問い合わせフォームのショートコード、地図の埋め込みを入れました。記事の 20% は URL が日本語です。
  • 手順:管理画面の「Import from WordPress」と同じ処理を、同じ順番で呼びました。1.2.0 は 1 回の送信で 30 件ずつ取り込みます。

記事数

取り込みの時間

送信の回数

300 件

約 1.1 秒

30 件ずつ 10 回

1,000 件

約 4.3 秒

30 件ずつ 34 回

1,000 件すべてが、失敗なく取り込まれました。記事数が増えても、取り込みの時間が見積もりを左右することはまずありません。

手直しが要る箇所は、記事数に比例して増える

取り込んだ 1,000 件を全件調べると、手直しが要る箇所は次のとおりでした。

  • URL が日本語の記事 200 件が、そのままでは開けない。 WordPress が内部で持つ %e7%94… の形のまま取り込まれ、公開ページでは見つからない扱いになります。
  • 引用ブロックを含む 100 件で、引用の本文が消えた。 出典(「工場長」)だけが残りました。
  • ショートコード 50 件が、角括弧の文字列のまま残った。 お問い合わせフォームは EmDash 側で作り直します。
  • カテゴリの親子関係が消えた。 「導入事例」の子だった「製造業」が、親のないカテゴリになりました。

機械で直せるものと、人が直すもの

手直しには、機械でまとめて直せるものと、人が 1 件ずつ見るものがあります。

日本語の URL は、機械で直せる側です。管理画面と同じ更新の仕組みを使い、200 件の URL を日本語に付け直す処理を書いたところ、約 2 秒で終わりました。直した記事は、日本語の URL で開けるようになりました。

引用の本文は、人が直す側です。取り込んだデータに本文が残っていないので、WordPress 側の元の記事から書き戻すしかありません。カテゴリの親子関係の付け直しと、フォームの作り直しも、管理画面での作業です。

移行の 5 段階:棚卸し、取り込み、手直し、URL と転送、公開前の確認。取り込みは 1,000 件で約 4 秒、工数の中心は手直しと確認
取り込みそのものは数秒。手直しと確認の量が見積もりを左右する

URL を付け直すと、旧 URL からの転送(リダイレクト)が自動で作られます。ただ今回の検証では、自動で作られた転送が旧 URL と一致しなかったため、転送の規則は自分で作って確かめます。EmDash の管理画面には転送の設定画面があり、/old-blog/… のような形をまとめて別の URL へ送る規則も作れます(公式ドキュメント)。公開前には、記事の件数、画像、リンクを元のサイトと照合します。公式の手順書も、確認が済むまで WordPress を消さないよう求めています。

費用は「記事数」「手直しの量」「公開後の運用」で決まる

移行と制作の費用は、公開されている目安で見積もれる

Nowever のサービス紹介ページ「EmDashでつくるWebサイト制作」には、料金シミュレーターと計算の条件が公開されています。移行に関わる部分は次のとおりです(2026年10月15日に確認。いずれも税別)。

項目

目安

条件

記事の移行

100 件まで 10万円

101 件目から 1 件 500円

移行元が WordPress 以外・不明

5万円を加算

データの整形

独自項目・特殊なレイアウト

10万円で仮計算

内容を見て確定

メディアの標準構成(制作)

65万円

新しく作る部分の目安

システム保守

月 4万円

稼働監視、バックアップ確認、システム更新、障害の一次調査

ページの計算式に当てはめると、記事 300 件の移行は 20万円、1,000 件なら 55万円になります。ここに、デザインを含む新しいメディアの制作費が加わります。シミュレーターの金額は概算で、正式な費用は相談のあとに決まります。ドメインや Cloudflare などの外部サービスの利用料は含まれていません。

手直しの量は、記事数よりも記事の作りで変わります。引用やショートコードを多く使った記事、独自の入力項目を持つ記事が多いほど、人が見る作業が増えます。見積もりの前に、どの記事に何が含まれるかを数えると、金額の幅が小さくなります。

Cloudflare の利用料は、追加機能を使うかどうかで変わる

EmDash のサイトが動く Cloudflare の基盤には、無料の枠と有料の枠があります。Cloudflare の公式の料金ページ(2026年10月15日に確認)では、次のとおりです。

  • 無料の枠:1 日 10万リクエストまで。
  • Cloudflare の有料プラン(Workers Paid):アカウントごとに月 5 ドルから。月 1,000万リクエストまで含み、超えた分は 100万リクエストごとに 0.30 ドル。
  • データベース(D1)と画像の保管場所(R2):どちらにも無料の枠があります。外への転送量に料金はかかりません。

管理画面の一覧(レジストリ)から入れる追加機能は、「箱の中」で動かす仕組み(サンドボックス)で動きます。この仕組みは有料プランが前提です(公式ドキュメント)。こうした追加機能を使うなら、月 5 ドルからの契約を見込みます。アクセス数ごとの費用の試算は、記事が拡散されたらホームページは落ちるかで扱っています。

正直に書くと、待ったほうがよい会社もある

移行を急がないほうがよい理由も、はっきりあります。

  • 長期サポートの期限が示されていない。 EmDash は版の付け方の規則(互換性を壊す変更は大きな版の切り替えで行う)を公式ドキュメントで示しています。一方で、ひとつの版を何年まで直し続けるかの約束はありません。期限を契約の条件にする会社は、示されるまで待つのが筋です。
  • 追加機能の数が少ない。 EmDash の開発チーム自身が、WordPress の数千のプラグインに並ぶまでには長い時間がかかると書いています。有料の追加機能の配布も、まだ始まっていません。
  • 取り込みに、知っておくべき穴がある。 引用の本文が消える件は、1,000 件の規模でも再現しました。SEO の説明文や独自の入力項目は、WordPress 側に専用の書き出しプラグイン(EmDash Exporter)を入れないと移りません。
  • 移したあとも、版を上げる作業がある。 このサイト自体も EmDash で動いています。今は 1.0 より前の 0.30 系で、1.x へ上げるには途中の 0.35 を経由する必要があります(公式の更新手順)。WordPress のプラグイン更新はなくなりますが、仕組みの更新作業がなくなるわけではありません。

待つと決めた場合も、WordPress 本体とプラグインの更新は続けてください。待つ間の費用は、今のサーバーと保守の契約で決まります。移る時期を後から決めやすくするため、次の節の項目だけは今のうちに数えておくと役に立ちます。

どの道を選ぶにしても、今のうちに数えておくこと

今移す場合も、待つ場合も、次の数字があれば判断と見積もりが早くなります。

  1. 公開している記事の数と、URL が日本語になっている記事の数
  2. 業務に欠かせないプラグインの一覧(フォーム、会員、予約、SEO など)
  3. 引用ブロック、ショートコード、地図などの埋め込みを使っている記事の数
  4. 独自の入力項目(カスタムフィールド)と、SEO の説明文を持ち込むかどうか
  5. デザインを刷新する予定の時期と、更新担当の体制

この 5 つが分かれば、「今移す」「新しい部分だけ EmDash」「待つ」のどれが合うかは、多くの場合その場で決められます。数え方が分からない項目があれば、そこから一緒に確かめます。EmDashでつくるWebサイト制作からご相談ください。

参考(一次情報)

WRITTEN BY

EmDash制作チーム

Noweverの「EmDashでつくるWebサイト制作」の制作チームです。Cloudflareの基盤で動くCMS「EmDash」によるサイト設計、更新機能、セキュリティ、WordPressからの移行について、制作の現場で確認したことを記録しています。

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