EmDashでつくるWebサイト制作の、解説と検証ノート記事一覧

記事が拡散されたらホームページは落ちるか:アクセス急増の仕組みと、月10万〜100万PVの費用試算

記事が SNS で拡散されたら、ホームページは落ちるのか。費用は跳ね上がるのか。レンタルサーバーの WordPress と Cloudflare 上の EmDash の仕組みの違いを図で整理し、EmDash 1.2.0 で記事を 1 回開くと何が数えられるかを計測。月 10 万 PV、100 万 PV、急増の日の費用を Cloudflare の料金表から試算しました。

この記事の目次

オウンドメディアを始めると、いつか「記事が SNS で拡散されたら、ホームページは落ちないか」「費用が跳ね上がらないか」という心配が出てきます。レンタルサーバーで、ニュースサイトに紹介された日にページが開かなくなった経験をお持ちの会社もあるはずです。

先に答えを書きます。Cloudflare 上の EmDash は、決まった大きさのサーバーを借りる仕組みではありません。アクセスが増えた分だけ処理が増え、使った分だけ数えられます。Cloudflare の有料プラン(Workers Paid)であれば、急増の日に上限で止まることはなく、費用は月 5 ドルの基本料に、込み分を超えた分が足されるだけです。試算では、月 100 万 PV(ページの表示回数)でも月 5.4 ドル前後でした。ただし、無料プランのままでは 1 日の上限で表示が止まります。この記事では、その仕組みと、計測した数字、試算の前提を順に示します。

「落ちる」とは何が起きることか:上限のある箱と、使った分だけ数える仕組み

左はレンタルサーバー:1 台のサーバーの CPU・メモリ・同時に受けられる数・転送量に上限があり、超えた分は 503 で断られる。右は Cloudflare 上の EmDash:アクセスごとに処理が増え、リクエスト数・処理時間・データベースの読み取り・画像の読み出しを数えて、込み分を超えた分だけ請求される
レンタルサーバーは上限のある箱。Cloudflare は使った分を数えるメーター。無料プランだけは 1 日の上限で止まる

レンタルサーバーの WordPress は、契約したプランの「箱」の中で動きます。CPU やメモリ、同時に受けられるアクセスの数、転送量に上限があります。上限を超えると、サーバーは「503(混み合っています)」という応答を返し、ページが表示されません。読者から見れば、これが「落ちた」状態です。

この仕組みは、レンタルサーバー会社自身も説明しています。たとえば、さくらインターネットは 2015年に「急激なアクセス増加があった場合にも即座に HTTP 503 エラーを回避する」ための機能(リソースブースト)を発表しました。同時接続数と転送量の上限を、最大 3 日間だけ緩める機能です。裏返せば、通常は上限があり、超えると 503 になるということです。

Cloudflare 上の EmDash は、仕組みが違います。

  • サーバーの「台数」や「大きさ」を契約しない。 ページを組み立てる処理(Cloudflare では Worker と呼ぶ)は、アクセスが来るたびに世界中の拠点で動きます。
  • 使った分を数える。 数えるのは、リクエストの回数、処理にかかった CPU 時間、データベース(D1)の読み取り行数、画像の保管場所(R2)からの読み出し回数です。
  • 有料プランには込み分がある。 月 5 ドルで、リクエスト 1,000 万回、CPU 時間 3,000 万ミリ秒、データベースの読み取り 250 億行が含まれます。超えた分だけが追加の請求になります。

一方で、無料プランには 1 日の上限があります。リクエストは 1 日 10 万回までで、超えると Cloudflare はエラー(1027)を返します。データベースの読み取りも 1 日 500 万行までで、超えるとその日は問い合わせができなくなります。無料プランは「箱」に近いと考えてください。

確かめたこと:記事を 1 回開くと、何が数えられるか

費用を見積もるには、「1 回の表示で、何が何回数えられるか」が要ります。Cloudflare の料金表には単価しか書かれていません。EmDash の公式ドキュメントにも、1 回の表示で何回データベースを読むかは示されていません。そこで、手元で計測しました。

  • 環境:EmDash 1.2.0 の公式ブログテンプレート(Cloudflare 向け)。2026年10月15日に新規作成し、手元の開発サーバー(Cloudflare と同じ実行環境 workerd と、手元のデータベース)で動かしました。本番や他人のサイトには負荷をかけていません。
  • 記事数:テンプレート付属の 8 本に、検証用の記事 300 本を足した 308 本。
  • 数え方:データベースへの問い合わせを数える小さな仕掛けを入れ、Cloudflare のデータベースが返す「読み取り行数」をそのまま合計しました。
画像 3 枚の記事を 1 回開くと、ページ本体で Worker 1 回とデータベース読み取り約 420 行、画像 3 枚で Worker 3 回と画像の読み出し 3 回が数えられる。CSS・JS・フォントは無料で数えない
画像 3 枚の記事なら、1 PV はおよそ Worker 4 回(試算の前提)。デザイン用のファイルは数えられない

結果は次のとおりです。いずれも 5 回ずつ開き、5 回とも同じ値でした。

ページ

データベースの読み取り(1 回の表示)

備考

記事ページ

約 420 行

記事 8 本のときは 202 行。記事数とともに増える

記事一覧・カテゴリ

約 105 行

記事数が増えても、ほぼ変わらない

トップページ

52 行

新着記事の一覧

固定ページ(会社概要など)

15 行

記事ページの行数が記事数とともに増えるのは、テンプレートが「公開中の全記事の日付」を毎回読んでいるためです。これは EmDash 本体ではなく、テンプレートの作り方による部分です。

画像は、画面幅に合わせて変換する仕組みを通るため、1 枚ごとに Worker が 1 回動き、画像の保管場所から 1 回読み出されます。計測した記事ページの画像は、アイキャッチの 1 枚でした。一方で、デザイン用の CSS や JavaScript、フォントは「静的ファイル」として配信され、Cloudflare の料金表で「無料・無制限」とされています。

小さな負荷をかけても、数え方は変わらない

同じ記事ページに、同時 10 本ずつ、500 回のアクセスを続けて送りました。500 回とも正常に表示され、データベースの読み取りは約 420 行 × 500 回でした。アクセスが増えても、ある所で急に費用がはね上がる段差はなく、回数に比例して増えるだけです。

次に、EmDash の「オブジェクトキャッシュ」(データベースの結果を一時的に覚えておく設定)を有効にして、同じ 500 回を送りました。1 回あたりの読み取りは 420 行から 9 行に減りました。費用と上限は、キャッシュの設定で大きく変わります。

このサイトの実際の数字

Nowever のこのサイトも、EmDash(0.30 系)で Cloudflare 上に置いています。Cloudflare の利用状況画面のデータ(2026年9月15日〜10月14日の 30 日間)は次のとおりでした。

  • Worker の実行:約 8.6 万回。毎分動く定期処理(月に約 4.3 万回)も含んだ数字と見ています。内訳は分けて取り出せませんでした。
  • 1 回あたりの CPU 時間:平均 約 12 ミリ秒、中央値 約 8 ミリ秒、遅い方から 1 割の境目で 約 19 ミリ秒。
  • データベースの読み取り:30 日で約 366 万行。

リクエストとデータベースの読み取りは、有料プランの込み分(月 1,000 万回、月 250 億行)の 1% にも届いていません。CPU 時間は 30 日で約 100 万ミリ秒で、込み分 3,000 万ミリ秒の約 3.3% でした。なお、このサイトは記事ページの HTML を Cloudflare の拠点に一時保存(キャッシュ)しています。2 回目以降の表示ではページを組み立て直さず、データベースも読みません。

月 10 万 PV、100 万 PV、急増の日の費用を試算する

上の計測をもとに、キャッシュを使わない、いちばん費用がかかる条件で試算しました。前提は次のとおりです。

  • 1 PV で Worker が 4 回動く(ページ本体 1 回、画像 3 枚で 3 回。計測した記事ページの画像は 1 枚だったが、試算では 3 枚とした)
  • 1 回あたりの CPU 時間は 12 ミリ秒(このサイトの 30 日平均)
  • 1 PV あたりデータベースを 420 行読む(記事 300 本規模の記事ページ)
  • 画像 1 枚につき、画像の保管場所から 1 回読み出す
  • 画像の変換は、Cloudflare Images の月 5,000 種類の無料枠に収まるものとする
  • テンプレートの定期処理が毎分 1 回動く(月 約 4.3 万回)
  • 料金は 2026年10月15日時点の Cloudflare の公表価格。1 ドル 150 円で換算し、税は含めない

条件

有料プランの月額(試算)

無料プランの場合

月 10 万 PV(1 日 約 3,300)

5.00 ドル(約 750 円)

1 日の上限には収まる。ただし後述の CPU 時間の上限に注意

月 100 万 PV(1 日 約 3.3 万)

約 5.4 ドル(約 810 円)

毎日、上限を超える

月 10 万 PV + 急増の日 100 万 PV

約 5.5 ドル(約 820 円)

急増の日は 約 1.2 万 PV で止まる

月 10 万 PV + 急増の日 1,000 万 PV

約 31 ドル(約 4,600 円)

同上

月 100 万 PV でも、リクエスト(約 400 万回)とデータベースの読み取り(約 4.2 億行)は込み分の中に収まります。込み分を超えるのは CPU 時間だけで、超過分は 0.4 ドル程度です。

1 日に 1,000 万 PV が来る極端な日でも、追加はリクエスト 約 9 ドル、CPU 時間 約 9 ドル、画像の読み出し 約 7 ドルです。データベースの読み取り(約 42 億行)は、まだ込み分の 250 億行に収まります。拡散が大きいほど費用は増えますが、増え方は回数に比例し、上限で止まることはありません。

無料プランの「約 1.2 万 PV で止まる」は、データベースの読み取り上限(1 日 500 万行 ÷ 420 行)から出した数字です。リクエストの上限(1 日 10 万回 ÷ 4 回)だと約 2.5 万 PV で、データベースの方が先に上限に届きます。

計算式と単価は、記事の制作ノートの再現用スクリプトに残しています。前提を変えて計算し直せます。

正直に書くと:費用と表示が変わる条件

試算は「この前提なら」という数字です。次の条件で、結果は変わります。

  • メディアを運営するなら、有料プランが前提になる。 無料プランは、1 回の処理に使える CPU 時間が 10 ミリ秒までです。このサイトの実測では、遅い方の 1 割が 19 ミリ秒を超えていました。Nowever も 2026年8月26日に有料プランへ切り替えています。理由は CPU 時間の上限と、追加機能を隔離して動かす仕組みです。
  • 画像が多いほど、数えられる回数が増える。 1 記事の画像が 10 枚なら、1 PV は Worker 11 回になります。画像の変換は、同じ画像・同じサイズなら月に 1 回だけ数えられ、月 5,000 種類までは無料です。この無料枠は Workers のプランとは別の、Cloudflare Images の枠です。超えると、Workers の有料プランでも新しい変換は失敗し、画像が表示されません。超えて使うには Images の有料プランを別に契約し、1,000 種類ごとに 0.5 ドルがかかります。この数は PV ではなく、画像の枚数とサイズの種類で決まります。なお、転送量(データの量)そのものには、Worker でも画像の保管場所でも料金がかかりません。
  • キャッシュの設定で、数字は一桁以上変わる。 Cloudflare の拠点に HTML を一時保存する設定(Workers Cache)を使うと、保存済みのページは Worker を動かさずに返ります。CPU 時間とデータベースの読み取りはほぼなくなります。ただし、公式の料金説明では、保存済みのページを返した回も「リクエスト」として数えられます。この設定を使うと、ふだん無料の CSS・JS・フォントの配信もリクエストとして数えられます。また、オブジェクトキャッシュを Cloudflare の KV(設定や結果を保存する場所)に置く場合は、KV の読み取りが別に数えられます。KV の読み取りが 1 PV で何回になるかは、確かめていません。
  • 記事数とテンプレートで、読み取り行数が変わる。 今回の 420 行は、記事 300 本規模の数字です。記事が 3,000 本になれば、同じテンプレートでは記事ページの読み取りも増えます。逆に、テンプレートの作り方で減らせます。
  • 悪意のある大量アクセスも数えられる。 使った分だけ数える仕組みは、攻撃や機械的なアクセスにも同じように働きます。お問い合わせフォームや管理画面には、同じ相手からの回数を制限する設定を入れておくのが安全です。
  • 定期処理の数え方は明記されていない。 テンプレートは毎分 1 回、予約公開などの定期処理を動かします。料金表の計算例からはリクエストとして数えられると読めますが、明記はされていません。試算ではリクエストとして入れています。
  • WordPress も、設定しだいで急増に耐えられる。 ページをキャッシュするプラグインや、配信網(CDN)を組み合わせれば、レンタルサーバーでも急増に強くなります。違いは、上限がどこにあり、誰が設定するかです。今回、WordPress 側の負荷試験はしていません。

どんな会社に向いているか:まず今のホームページで確かめること

Cloudflare 上の EmDash が向いているのは、次のような会社です。

  • SNS やニュースで記事が取り上げられることを狙っている
  • キャンペーンや発表の日に、アクセスが一時的に集中する
  • 「上限を超えたら止まる」より、「使った分だけ払う」方が安心できる

反対に、今のホームページが月に数万 PV で安定していて、503 が出たことがなく、キャッシュの設定も済んでいるなら、急増への備えだけを理由に移る必要はありません。

まずは、今のレンタルサーバーの管理画面で、リソースの使用状況や 503 の記録を確かめてみてください。急増の日にどれだけ断っていたかが分かれば、移るかどうかを判断する材料になります。記録の読み方や、自社の記事数・画像の数での試算が必要なら、EmDashでつくるWebサイト制作からご相談ください。

参考(一次情報)

WRITTEN BY

EmDash制作チーム

Noweverの「EmDashでつくるWebサイト制作」の制作チームです。Cloudflareの基盤で動くCMS「EmDash」によるサイト設計、更新機能、セキュリティ、WordPressからの移行について、制作の現場で確認したことを記録しています。

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