
「デイサービスには行きたくない」と言う親に、家族はどう向き合う?
この記事の目次全8章
親から「デイサービスには行きたくない」と言われると、本人の気持ちを尊重したい一方で、入浴や食事、日中の安全を支える家族には疲れや不安が積み重なります。説得を続けるべきか、いったん引くべきか分からず、家族だけで抱え込んでしまうこともあるでしょう。
大切なのは、利用への同意を急ぐことではなく、何が嫌なのか、条件を変えられるのか、別の支え方が必要なのかを順番に確かめることです。この記事では、親への聞き方から見学・手続き・費用の確かめ方、利用後の見直し、相談先、別の支え方までを整理します。親の希望と家族が続けられる介護の両方を踏まえ、次の一歩を選べるようになります。

親の意思と家族の負担を並べて整理し、理由の確認から次の行動を選びます。
なぜ行きたくないのか、どう聞けばよい?

拒否の背景によって、尊重すること、条件を調整すること、健康状態を確かめることの優先順位が変わります。
「行きたくない」という返事は、わがままでも診断の根拠でもありません。まずは、親自身の言葉と、拒否が起きる場面を確かめます。通所介護(デイサービス)の公式情報では、食事、入浴、日常生活上の支援、機能訓練などが主な内容として示されていますが、実際の支援や過ごし方は事業所ごとに異なります。
嫌がる理由としてよくあるのは、次のようなものです。
- 知らない場所や集団活動が落ち着かない
- 送迎車や長時間の外出が不安
- 入浴や着替えを手伝われたくない
- 食事や活動の時間を決められたくない
- 過去の見学や利用で嫌な経験があった
候補を答えと決めつけず、「車に乗るのが嫌? それとも向こうで過ごすのが嫌?」など一つずつ聞きます。親の言葉、拒否が起きた場面、「午後ならよい」「入浴しないなら見学してもよい」といった許容条件を記録してください。
答えを急いで聞き出そうとすると、親も身構えてしまいます。疲れている時間や出発直前を避け、普段どおり話せるときに、一つ聞いて返事を待つくらいから始めましょう。「一日家を空けるのが嫌」という言葉の背景に、いつもの番組を見たい、庭の手入れを続けたいなど、大切にしている日課があるかもしれません。理由を家族が決めつけず、残したい過ごし方も尋ねてみてください。
聞き取った内容は、おおよそ次の3つに分けて考えます。以前から外出や集団を好まないなら、本人の希望として扱います。送迎、入浴、活動、利用時間など特定の条件への拒否なら、事業所側で調整できる条件かどうかを聞きます。拒否が突然始まり、普段と違う体調や様子も見られるなら、説得より健康状態の確認を優先します。拒否だけから認知症、うつ、せん妄や意思決定能力を判断することはできません。
急な体調変化があるときは医療を優先
突然の激しい症状、意識や呼吸の異常、差し迫った危険がある場合は、利用の話し合いを中断して医療対応を優先します。緊急性の目安は、厚生労働省の「こんな時は迷わず119へ」を確認してください。差し迫った危険はないものの新しい体調変化がある場合は、かかりつけ医などへ相談します。
「あなたのため」だけでは伝わらないときは?
「あなたのためだから」と繰り返しても、本人には「自分の気持ちは聞いてもらえない」と届きがちです。親の懸念を先に聞いたうえで、家族の困り事も責めずに生活上の事実として伝えます。
会話のゴールは「同意」ではない
利用への同意を会話のゴールにせず、双方が受け入れられる次の行動を探します。
次の5つの手順で、一度に扱う問題を一つに絞ります。
- 拒否を受け止める
「行きたくないんだね。何が一番嫌か聞いてもいい?」と、反論せずに尋ねます。
- 具体的な懸念を一つ聞く
「送迎と入浴なら、どちらが気になる?」のように一つずつ聞きます。選択肢以外の理由も聞きます。
- 聞き取った内容を言葉にして返す
「知らない人に入浴を手伝われるのが嫌なんだね」と短く返し、理解が合っているか確かめます。
- 家族側の事実を責めずに伝える
「一人で毎回入浴を手伝うのは転倒が不安」「通院の日は昼間ずっと家にいられない」など、事情を一つ伝えます。
- 小さな選択肢を示すか、相談のため中断する
「資料を見るだけにする?」「見学できるか電話で聞くだけならどう?」と提案します。苦痛や怒りが強まるなら、「今日は決めず、相談してみよう」と中断します。
情報を見る、電話で聞く、見学の可否を確かめることと、定期利用への同意は別です。だます、行き先を告げずに連れていく、脅す、嫌がる活動へ無理に参加させる方法は避けます。会話を重ねるほどつらそうになる場合は、説得を続けず専門職への相談に切り替えましょう。
認知症の診断があり、説明しても覚えていられない場合は、理由を論じるより「お風呂に入りに行く日」「お昼を食べに行く」など、本人が受け入れやすい目的で短く伝える方法がよく使われます。本人をだますのではなく、本人に分かる言葉で本当のことを伝える、という考え方です。出発直前に強く拒むときは、無理に車へ乗せず、その日は見送って事業所に伝えるのも一つの対応です。どう伝えるかは事業所やケアマネジャーと一緒に決めておくと、送迎時にも同じ言い方で揃えられます。
見学だけでもできる?本人と一緒に確かめたいこと

本人が気にしている条件を中心に、見学や体験の前に事業所へ聞いておきます。
見学は多くの事業所で受け付けており、1日や半日の体験利用を設けている事業所もあります(体験の有無、条件、費用は事業所ごとに異なります)。担当ケアマネジャーがいれば手配を頼めますし、いなくても事業所へ直接問い合わせできます。本人が同席できそうなら、本人が気にしている点を一緒に見に行くのが一番の確認になります。
通所介護のほかにも、少人数の地域密着型や認知症対応型の通所サービスがあります(介護サービスの種類は介護サービス情報公表システムの公式ガイドで一覧できます)。候補の事業所には、親が嫌がっている条件を直接質問しましょう。家族からは、生活リズム、移動や感覚面の支援、食事上の注意、疲れやすい時間、不安になりやすい場面を伝えます。
見学・体験前に事業所へ聞いておきたいこと
見学・体験と一日の流れ
「見学や体験はできますか。条件と費用、到着から帰宅までの流れ、休める場所を教えてください」
送迎と利用時間
「自宅は送迎範囲内ですか。時間帯、乗車時間の目安、家族の立ち会いが必要な場面を教えてください」
食事・入浴・身の回りの支援
「食事や入浴を断った場合はどう過ごしますか。食事上の配慮やトイレ、着替えの支援範囲も教えてください」
服薬の対応と体調変化時の連絡
「服薬に関して対応できることと必要な情報、体調変化時の連絡方法を教えてください」
途中帰宅・欠席・キャンセル・費用
「途中帰宅の手順、家族の迎えが必要な条件、欠席期限、キャンセル料、体験を含む費用を教えてください」
見学では、設備よりも、親が嫌がっていた条件への対応や、活動に参加しない場合の過ごし方を見ておくと判断しやすくなります。
利用を始めるには、どんな手続きと費用が必要?
デイサービス(通所介護)を介護保険で使うには、原則として要介護認定が必要です。大まかな流れは、①市区町村の窓口で要介護認定を申請する(地域包括支援センターでも相談できます)、②認定調査と主治医意見書をもとに、要支援1・2、要介護1〜5、非該当のいずれかが通知される(申請から原則30日以内)、③要介護1以上なら、ケアマネジャーにケアプラン(どの支援を、いつ、どれだけ使うかをまとめた計画)を作ってもらう、④事業所と契約して利用を始める、という順です。ケアプランの作成に自己負担はありません。詳しくはサービス利用までの流れ(介護サービス情報公表システム)に説明があります。
要支援1・2の場合、通所介護は介護保険の対象外で、市区町村が行う総合事業(介護予防・日常生活支援総合事業)の通所型サービスなどが受け皿になります。この場合のケアプランは地域包括支援センターに相談します。認定を受けていない、どの区分か分からないときも、まず地域包括支援センターへ連絡してください。細かな手続きや自治体独自の制度は地域で異なります。相談のしかたは後の見出しで説明します。
費用のうち、介護保険が適用される部分の自己負担は原則1割(所得に応じて2割または3割)で、入浴介助などを選ぶとその分の費用が加わります。食費やおやつ代、活動材料費などは保険外の実費です。実際の月額は、回数と時間、負担割合、選ぶ支援、実費の組み合わせで決まります。介護サービスにかかる利用料の公式解説も参照し、一般的な相場ではなく、自分の予定条件に基づく見積もりを依頼してください。
月額見積もりを書面でもらうときに伝えること・聞くこと
- 要介護・要支援の区分とケアプランの有無
区分によって使える制度が変わります。 - 週の回数、曜日、利用時間
実際の予定で試算を頼みます。 - 自己負担割合と、入浴など選ぶ支援の費用
入浴介助などを選ぶと費用がどう変わるか聞きます。 - 保険外の実費
食費、日用品、活動材料、体験利用分を分けて出してもらいます。 - 欠席・キャンセル・途中帰宅の扱い
条件を聞いたうえで、前提付きの月額合計を書面でもらいます。
届いた見積書は、想定回数と利用時間、実費の範囲が伝えた条件どおりかを見て、体験費や欠席時の扱いは契約書と突き合わせます。
見積もりと一緒に、家族の予定表も作ってみてください。予定表には、通っている時間だけでなく、送迎前の着替えや持ち物の準備、帰宅後の付き添いも書き出してみましょう。家族が仕事を中断する時間や、別の家族へ頼みたいことが見えてきます。利用時間が長ければ必ず負担が減るとは限りません。朝の支度が集中するなら何を前日に用意できるか、送迎時に対応できない日があるなら誰へ相談するかまで、具体的に把握しておきます。
通い始めても嫌がるとき、続けたほうがよい?

利用後の反応を記録し、続ける・条件を一つ調整する・中断して相談するのどれが合うかを見直します。
一度つらそうだっただけで合わないと決めつける必要はありませんが、「慣れるまで」と繰り返すのも適切ではありません。本人、家族、事業所の情報を表1のように分けて記録し、つらさが生じた場面を具体的にします。
| 見る点 | 記録する内容 | 判断につながること |
|---|---|---|
| 出発前の様子と本人の感想 | 本人の言葉、拒否の強さ、受け入れられた条件 | 継続できる点や主な懸念 |
| 送迎・利用中 | 車、到着、活動、食事、入浴など困難が起きた場面 | 一つだけ調整する条件、事業所側で調整できる条件 |
| 帰宅後の健康・安全 | 疲労、食欲、睡眠、痛み、転倒など普段との違い | 中断や医療・専門職への相談 |
| 事業所の観察と利用目的 | 当日の様子と、入浴、食事、日中の安全などの目的 | 継続、事業所変更、別の支え方 |
| 家族が続けられるか | 準備、送迎対応、連絡、費用を含む負担 | ケアプラン見直しの必要性 |
本人が受け入れられる点があり、安全上の問題がなく、利用目的にも合っているなら継続を検討します。原因が送迎時間など一つに絞れ、本人も納得できる変更があるなら、条件を一つだけ調整します。
強い拒否や生活への悪影響が続く場合、家族が維持できない場合は、いったん中断して相談します。事業所との相性が原因なら変更、通所という形が合わないなら別の支え方も選択肢です。急激で重い体調変化や差し迫った危険では医療対応を優先します。ケアプランの作成と見直しは、居宅介護支援(ケアマネジャー)の公式解説にあるとおりケアマネジャーの役割です。支援が合わなくなったときは、見直しを相談できます。
本人が乗り気でなくても、家族だけで相談していい?
本人が利用に同意する前でも、家族だけで相談できます。担当のケアマネジャーがいる場合は、まず連絡しましょう。ケアマネジャーは、本人や家族の相談を受け、サービスの調整やケアプランの作成・見直しを支える専門職です。本人の希望だけでなく、家族が担っている介護と、今後続けるのが難しいことも伝えます。
担当のケアマネジャーがいない、サービスを利用していない、相談先が分からない場合は、親の住所を担当する地域包括支援センターへ連絡します。高齢者と家族の介護・保健・福祉に関する地域の総合相談窓口で、権利擁護の相談も担当しています。担当するセンターは、市区町村のホームページで調べられるほか、厚生労働省の地域包括ケアシステムのページに全国の地域包括支援センター一覧(都道府県別のリンク)があります。センターの役割は、介護サービス情報公表システムの生活関連情報に説明があります。
相談前にメモしておくと話が早いこと
本人の言葉と許容条件
嫌な場面と「見学だけならよい」など受け入れられる条件を記録します。
現在の介護と家族が困っていること
誰が何を担い、何を続けるのが難しいかを具体化します。
最近の変化
体調、食事や水分、転倒、睡眠、移動、普段の様子の変化と時期を伝えます。
すでに試したこと
声かけや問い合わせの内容と本人の反応を整理します。
優先する一つか二つの課題
入浴の安全、昼間の見守り、家族の休息などから絞ります。
親が同意していない段階の相談でよくある疑問
Q. 家族だけで相談したことが本人に伝わると、関係が悪くならないか心配です。
相談した事実をいつ、誰が本人に伝えるかも含めて、ケアマネジャーや地域包括支援センターに相談できます。本人の意向を無視して進めるのではなく、本人に説明しやすい形を一緒に考えてもらう、と捉えてください。
Q. 本人の理解や希望が日によって変わるときは、どうすればよいですか?
短く分かりやすく説明し、落ち着いて話せる時間を選びます。繰り返し示される好みを記録して、ケアマネジャーや医療・介護職と共有しましょう。理解の揺れだけで本人に判断する力がないと決めつけず、繰り返し示される好みを本人の意思として尊重します。契約や同意の進め方に不安があれば、地域包括支援センターやケアマネジャーに相談してください。
デイサービス以外の支え方も考えられる?
デイサービスへ行くこと自体を目的にせず、「安全に入浴したい」「家族が不在の時間を支えたい」など、優先する課題から別の支え方を表2で比べます。
| 解決したい課題 | 相談候補 | 聞いておく点と家族に残る役割 |
|---|---|---|
| 入浴の安全 | 訪問入浴、訪問介護、福祉用具、別の通所先 | 身体状況、住環境、支援範囲を聞く。準備や見守りが残る場合があります。 |
| 食事と生活リズム | 配食など地域の支援、訪問介護、別の通所支援 | 食事制限、時間、安否確認の範囲を聞く。摂取量や在庫の把握が必要なことがあります。 |
| 健康観察 | 訪問看護、医療機関への相談 | 医療上の必要性、手続き、対応範囲を聞く。日常の連絡や緊急時対応は別途必要です。 |
| 日中の安全と家族の休息 | 訪問型支援、短期入所、別の通所先、支援の組み合わせ | 対応時間、予約、費用、訪問の受け入れを聞く。支援のない時間の調整は残ります。 |
| 交流や好む活動 | 別の雰囲気の通所先(少人数の地域密着型通所介護、認知症対応型通所介護など)、地域活動、本人が好む外出 | 興味、移動手段、参加意思を聞く。交流や認知機能への効果は一律ではありません。 |
利用条件、空き状況、費用、訪問を受け入れられるかは、地域や提供先によって異なります。また、一つの支援ですべてを補えるとは限らないため、家族に残る役割も含めて相談しましょう。
今日、家族だけで抱えずにできること
相談のメモは、きれいにまとめなくても構いません。親が実際に話した言葉と、家族が見て気になったことを分け、分からない点はそのまま残します。本人への説明を誰から、いつ行うと話しやすそうかも相談できます。
家族の休息は、介護を続けるための予定として考えてよいものです。休める時間ができても家事だけで埋めず、通院や睡眠、自分の用事に使いたい時間もケアマネジャーへ伝えましょう。親の希望を大切にすることと、家族が支援を求めることは両立します。
今日できるのは、親の言葉、拒否が起きる場面、受け入れられる条件、家族が続けられない介護を書き出し、優先課題を一つか二つ選ぶことです。その記録を持って、担当ケアマネジャーまたは地域包括支援センターへ相談してください。
